NESとライセンス制
誰でもソフトを出せて質を見る人がいなかったことが1983年の崩壊を招いたのなら、答えは「門番を置く」ことになります。北米版ファミコンのNESは、本体とカートリッジの両方に認証チップを積みました。10NESです。合わないカートリッジを差すと、本体は一秒に一度リセットを繰り返し、画面と電源のランプが明滅する——通称「点滅死」。品質を統制する仕組みが、死んだ市場を蘇らせました。その門をこじ開けようとした会社の話は、上の「神話」に書いた通りです。門番の思想は、のちにゲームボーイの特許(→任天堂の創業)にも書き込まれています。
神話の訂正
任天堂はテンゲンとの裁判に完全勝訴した
そう単純ではありません。アタリの子会社テンゲンは、本体側の認証チップ10NESを解析するために、著作権局へ「任天堂と紛争中だ」と偽って申告し、秘密の設計資料を合法的に閲覧してコピーするという手を使いました。裁判では、いま動いている本体を突破するのに必要な範囲の複製は侵害とされなかった一方、将来の改良に備えて余分にコピーした部分は侵害と判断されます。特許については陪審が侵害を認めましたが、裁判所は任天堂の特許が自明(進歩性がない)と判断される可能性も指摘しました。確定判決の前に和解しており、任天堂が得たのは戦術的な勝ちで、決定的な司法判断ではありません。